銀棺の一角獣
「いいわ。ティレルに使う費用を惜しむわけにもいかないし……石鹸はどこの品だったかしら?」

「ポラルーン村ですな」

「城におさめる数を増やしてもらいましょう。村長宛に命令書を書いてくれる? それと……そうね、何か村長に贈り物を考えて――代金はわたしの個人的な収入から払っておいてちょうだい」

「かしこまりました」


 こうして侍女は無事に石鹸を手に入れ、アルティナは新しい石鹸を確保するために新たな命令を出したのだった。

 ティレルの世話は、クレアの他、サリィという侍女で担当している。二人とも十代の後半で、アルティナに頼まれて王宮に上がった下級貴族の娘だった。


「ティレル様、今日は水浴びですか? 浴室をお使いになりますか?」


 クレアがティレルにたずねた。二人と一頭は、テラスで日光浴をしている。

「浴室だ。俺は水浴びでもかまないが、おまえたちに気の毒だからな。そろそろ水は冷たいだろう」
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