銀棺の一角獣
 ティレルが身を寄せると、クレアはきゃあきゃあと笑った。比較的冷静なサリィは、


「では、お支度をしてきますね」


 と先に立って浴室に消えていく。なおも身を寄せるティレルをするりとかわして、クレアもサリィに続いた。


「ティレル様、お支度整いました」


 クレアがティレルを呼ぶ。ティレルが浴室に足を踏み入れた時には、浴室内にはいい香りが立ちこめていた。ハーブを使った香りのいい石鹸を侍女たちが泡立てているからだ。


「……お背中お流ししますね。低い体勢になっていただけますか?」


 サリィの言葉にティレルは素直に四本の脚を曲げて床に座る。サリィとクレアの二人は桶に並々と汲んだ湯をかけて、ティレルの背中を濡らしていく。それから泡立てた石鹸をつけたブラシで、ティレルの背中をこすり始めた。

 顔を洗う時には、ティレルは顔をしかめていた。石鹸が目にはいるのは不愉快らしい。

 それを終えると、今度は立ち上がって腹や脚を洗ってもらう。その頃には、浴室内の温度はだいぶ上がっていた。
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