銀棺の一角獣
「そうきぃきぃ言うな。せっかくのかわいい顔が台無しだぞ」


 その時、浴室の扉が開かれた。


「案内頼んでも誰も出てこないと思ったら……ティレル?」


 アルティナはじろじろとティレルを上から下まで眺める。


「ずいぶん、楽しい入浴だったようね? でも、そろそろ出てきてほしいのだけれど」 やってきた女王に、あわててサリィとクレアは頭を下げた。

「ん? 何かあったか?」


 ティレルが尾を振ると、激しく水滴が飛び散った。アルティナはひょいと後ろに飛び退いて、水滴から身を守る。


「もう、忘れてしまったの? 明日、キーラン様がいらっしゃるでしょう。
歓迎の宴の準備をあなたにも手伝ってほしいの」

「……そういや明日だったか。サリィ、すまないが体を拭いてくれ」


 クレアは、ティレルが散らかした浴室の片づけにむかう。その横でサリィに体を拭いてもらったティレルが合流するのを、アルティナは辛抱強く待っていた。


「女王陛下をお待たせして申し訳ないな」

「……少しも悪いと思っていないくせに」
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