銀棺の一角獣
アシュリーは椅子の背にかけられていたショールを取って肩にはおる。かけた位置が気に入らなかったらしく、ライオールの方は見向きもせずにそれをかけ直した。
「クレモンズ領主の地位を賜りました。これから出立いたします――もう、お目にかかることもないでしょう。殿下のご厚情……忘れはいたしません」
「クレモンズ領主、だと?」
ライオールはアシュリーの側に近づくと、その手を取った。そうすると、月明かりの中に彼の均整の取れた体型がくっきりと浮かび上がる。
アシュリーが領主として赴任するという地は、ディレイニー王国の中でも最北端。冬は雪に埋もれてしまうという地域だ。土地は貧しく、民も貧しく、そこの地位を欲しがる領主はいない。だから北の月などと言い出したのだとようやく彼は気がついた。
「女で――それも庶出の身ですもの。身に過ぎた地位でございます。では、失礼いたします……殿下」
「クレモンズ領主の地位を賜りました。これから出立いたします――もう、お目にかかることもないでしょう。殿下のご厚情……忘れはいたしません」
「クレモンズ領主、だと?」
ライオールはアシュリーの側に近づくと、その手を取った。そうすると、月明かりの中に彼の均整の取れた体型がくっきりと浮かび上がる。
アシュリーが領主として赴任するという地は、ディレイニー王国の中でも最北端。冬は雪に埋もれてしまうという地域だ。土地は貧しく、民も貧しく、そこの地位を欲しがる領主はいない。だから北の月などと言い出したのだとようやく彼は気がついた。
「女で――それも庶出の身ですもの。身に過ぎた地位でございます。では、失礼いたします……殿下」