銀棺の一角獣
 家にいても身の置き所がなかったアシュリーには、ライオールの呼び出しが待ち遠しかった。彼の寝室に直行で、そこからすぐに返されるのだとしても。


「甘い物が好きなんだろう? 厨房から運ばせた。少し持って帰るといい」


 時々、甘い物が用意されている。ライオールは甘い物は好まないから、それはアシュリーのためだけに用意された物。父の家にはそんなことをしてくれる人はいなかった。

 だからこそ、手放さなければならないと思ったのだ。

 継続して彼の寵を受けているのはアシュリー一人。彼にとってアシュリーは一番便利な相手だから続いていたことくらいアシュリーには容易に想像できた。

 彼に何も要求しないから――けれど、そこに特殊な想いがあるのだと誤解した貴族たちは、アシュリーに無理な要求を押しつけるようになってきた。

 今まではうまくかわしてきたけれど、一つ間違えれば今度はライオールが足をすくわれる原因になりかねない。
< 371 / 381 >

この作品をシェア

pagetop