銀棺の一角獣
 父の目を盗んで宰相に談判し、領主の地位を得た。

 もともとアシュリーのことを快く思っていなかった宰相は、喜んでアシュリーを僻地に派遣してくれることになった。二度と都に戻ってくるなとのありがたいお言葉つきで。

 後悔はしない。アシュリーの欲しいものなど手に入るはずがないことくらいわかりきっている。


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 クレモンズ領の冬は寒い。いくら暖炉に火を焚いても、部屋全てを温めることなどできなかった。


「本当に窓が凍るのね」


 冷たい窓に額を押しつける。もともと村娘として育ってきたから、他の貴族なら嫌がるであろうこの地での生活もアシュリーにとっては十分だった。


「領主様、春になってからの開墾計画ですが」


 侍女のアマーリエが書類を手に、部屋に入ってくる。


「……そこに置いておいてくれる? 後で確認しておくから。土壌の改良から始めなければいけないから、実際に作物を植えられるのは来年になってからね」
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