銀棺の一角獣
■□■ □■□ ■□■

 三年が過ぎた。

 アシュリーの持ち込んだ土壌の改良方法は、この地にとっては適していたようだ。以前よりはるかに麦の収穫量が増えて、クレモンズ領は以前より少しずつ豊かになりはじめようとしている。結果が出るのはまだまだ先のことになるが。


「領主様自らそんなことをなさるんですか?」


 とがめるようなアマーリエの声にアシュリーは小さな微笑みを返す。領民たちと同じような粗末な服に身を包んで畑に出る生活も苦ではなかった。


「領主様! 大変です! お城から人が」


 執事として雇っている男が、転がるようにして走ってくる。


「迎えに来てやった」

「……ライオール……様」


 アシュリーは呆然として男の後ろからついてくる人物の名を呼んだ。赤と金の入り交じった髪に緑の瞳。こんな僻地にいるのが不釣り合いな存在感。


「――他に男を作ってなんていないだろうな?」


 あまりのことに、アシュリーは言葉を失ってしまった。
< 374 / 381 >

この作品をシェア

pagetop