銀棺の一角獣
「――本当に窓が凍るんだな」


 昼間からほとんどずっとベッドで過ごしていた。夜になって月が昇るのを二人ベッドから眺めている。


「戻ってこい、アシュリー。誰にも文句は言わせない」


 懐かしい声音だとアシュリーは思った。アシュリーが彼に逆らえないことを知り尽くしている声。

 愛している、なんて甘い言葉を彼が言ってくれるわけではないけれど。アシュリーは、ライオールの胸に顔を埋めた。

 
■□■ □■□ ■□■


 アシュリーが王宮に戻ったのは一年後のこと。その時には長男を腕に抱えていた。

 その一年後にもう一人、さらにそれから二年後にもう一人、と三人の王子を生んだ後ようやく王妃としての地位についた。周囲に認められるまでは、とアシュリー自身が固辞し続けての結果だ。


「アシュリー、行くぞ」

「待ってください。子どもたちがお見送りをしたがっています」


 乳母の腕の中で眠る三男。その両脇で見上げている長男と次男の額に唇をあててから、アシュリーは馬車に乗り込んだ。
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