銀棺の一角獣
「他人の大切にしている物を奪う。それ以上の快感があるか?」

「な……何ですって?」


 あまりな事実を理解することを頭が拒否している。

 それだけ――ただ、それだけのために父も兄も命を落とさねばならなかったというのだろうか。

 怒りにアルティナは目の前が真っ赤になるような気がした。

 そんなことのために――!

 口を開きかけるが、ライオールはもうアルティナには興味を失っているようだった。


「……アルティナ」


 それまで沈黙を貫いていたキーランがアルティナの袖を引く。


「この場では……これ以上は……」


 涙を浮かべた瞳でアルティナが彼を見つめると、彼は首を横に振った。唇を噛みしめたアルティナを引き寄せて、身体に腕を回す。

 その様子を、冷笑を浮かべたライオールは横目で見つめて棺を運び入れるように命じた。


「予想していたよりはるかに大きかったな」
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