銀棺の一角獣
「これで最後だ。封印を解け――さもなくば、一人ずつ順番に切る」


 アルティナは騎士たちがいる方に視線をさまよわせる。アルティナと目が合ったディレイニー貴族は目を伏せた。自分たちの主君の振る舞いを恥じているのかもしれない。

 昨夜は同席を許さなかったのに、今日は許したのはこのためか。屈辱に頬を歪ませたアルティナはもう一度ライオールをにらむと、棺に向かって歩き始めた。


「――なりません!」


 ルドヴィクの声が室内の空気を切り裂く。

 どうにでもなれ。自暴自棄になって、アルティナは棺へと歩み寄る。国を守ることのできない守り神など、何の意味がある?


「アルティナ様! なりません!」


 剣を首に押しつけられてもなお、ひるむ様子のないルドヴィクの言葉も耳には入らなかった。

 アルティナの歩みに従って、白いドレスの裾が緩やかに揺れる。キーランが何か叫んでいるのも、気にならなかった。
< 47 / 381 >

この作品をシェア

pagetop