銀棺の一角獣
 それから布の端に手をかける。張りつけられた布を爪でひっかくようにして摘む部分を確保しようとした。


「アルティナ様!」


 ルドヴィクの声がしんとした室内に響きわたる。アルティナは目を閉じて、その声を耳から追い払おうとした。

 それから、少しめくれた布に手をかけると一気に引き剥がした。ぴりぴりとした感覚が、指の先から伝わってくる。

 棺の蓋が中から弾かれたように舞い上がった。勢いに押されたアルティナは、床に倒れ込む。

 したたかに打った肘を呪いながら上半身を起こしたアルティナは息をのんだ。蓋が完全に外された棺からゆらゆらと白い煙のようなものがのぼっている。

 それは先ほどライオールの頭部を覆っていた黒い影とは対照的に光り輝いていた。

 ゆらり、と空気が揺れたように見えた。白い煙がくるくると渦を巻き、消えたかと思うとそこには白銀の一角獣が立っていた。

 アルティナの髪の色と同じ白銀の毛並み。同じ紫水晶の瞳。神聖なる存在を目の当たりにして、広間は静けさに包まれた。

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