銀棺の一角獣
「ライディーアの娘よ――よくぞ封印を解いてくれた。感謝する」


 一角獣はアルティナの前にかがみ込んだ。礼を尽くすかのように頭を下げる。アルティナはそっと手を伸ばしてその角に触れた。何かに導かれているかのように。

 その瞬間、一角獣の姿が霧散して、完全に消え失せた。残されたのは空っぽの棺だけ。


「――逃がしたな!」


 ライオールが眉を吊り上げる。見に覚えのない言いがかりに、目の前が真っ暗になった。封印を解くよう命じたのはライオールだ。一角獣が逃亡したのは、アルティナのせいではないのに。


「……命が惜しくないとみえる」


 冷笑がライオールの口元に刻まれる。彼が剣を抜くのを見て、アルティナは目を閉じた。


「父上! 彼女はわたしの婚約者です! 剣をお引きください!」


 キーランが必死に声を張り上げ、アルティナとライオールの間に割って入る。けれど、父であるライオールが軽く小突いただけで、彼は弾かれて床に倒れ込んだ。
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