銀棺の一角獣
「剣を奪え! 女王陛下をお守りしろ!」


 真っ先に動いたのはルドヴィクだった。声を張り上げ、仲間たちを叱咤し、逃げまどうディレイニー貴族たちをかき分けてアルティナの元へ近寄ろうとする。

 乾いた笑い声が喧噪の中でアルティナの耳をとらえた。

 笑っているのはライオールだった。彼は大股にアルティナに近寄ると、腕をつかむ。


「動くなよ、ライディーアの騎士――さもなくば、女王の首を落とす」


 大柄なライオールにつかまれて、アルティナは身動きすることさえできなかった。いつの間に抜いていたのか、喉に冷たい金属の感触が突き刺さる。


「……あなたたち、お逃げなさい! 誰でもいい、国に帰り着いてそして……」


 最後まで言葉を発することはできなかった。命令に背いて一気に飛び込んできたのはルドヴィクだった。


「アルティナ様を離せ!」


 こんな顔をした彼を見るのは初めてだった。


「正面からやり合おうというのか」


 愉快そうに声を上げたライオールがアルティナを突き飛ばす。
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