銀棺の一角獣
よろめきながら立ち上がろうとしたアルティナに手を貸して誰かが立たせてくれる。
「キーラン、様……」
アルティナを力づけるように両肩に手をかけると、彼は広間の入り口の方を顎で示した。
「……ここから一度出た方がいい。ここは危険だ」
「でもっ」
アルティナの視線の先ではライオールとルドヴィクが剣を交えている。激しくぶつかり合う剣の音に身がすくんだ。
騎士たちの稽古場を見学に行ったことは何度もあるけれど、今目の前で行われているのは命をかけたやりとりであることくらいわかる。
ルドヴィクを置いていくことなどできなかった――彼だけではない。国から着いてきてくれた他の騎士たちも。
悲鳴が上がり、アルティナはそちらに気を取られる。よく知っている近衛騎士団の制服を着た男が床に倒れたところだった。
「――やめて! お願いだから!」
懇願するアルティナにはかまわず、キーランに広間から引きずり出される。扉の向こう側では激しい戦闘の物音が続いていた。