銀棺の一角獣
「ケイシー、君は席を外してくれないか」


 言われてケイシーは一礼し、部屋を出ていく。キーランは一度座った椅子をアルティナの方へと少し寄せた。


「大丈夫。父上の方もうまくごまかせた――と思う」

「……本当に、なんとお礼を……」


 重ねて礼を言おうとするアルティナを、彼は首を横に振ることで遮った。


「ここは僕の私室だから、あの牢にいるよりは身動きがとれると思う。けれど、無茶はしないで。何とかしてあげる。君も――君の騎士たちも」


 自分の力なんて、たいしたことはないけれど――とキーランは苦笑いした。


「ここ何年かの間で父上は……何て言うか人が変わってしまったみたいなんだ。昔はあんなに征服欲には囚われていなかったと思う」


 キーランは深々とため息をつく。


「ライディーアから運んできた棺――あの中にいた一角獣は何ものなのか、アルティナは知ってる?」

「……いえ」


 もっと国のことに興味をしめしていれば、とアルティナは思う。そうすれば、あの棺についてももっと詳しく知っていただろうに。
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