銀棺の一角獣
 言葉を濁したデインの茶の瞳が、部屋の一番後ろに立つ青年騎士をとらえる。

 彼の見事な金の髪は長かった。

 それを首の後ろから毛先まで編み、先は飾り紐でくくっている。夏の空のような明るい澄み切った青い瞳は、今は伏せられていてそこにどんな表情が浮かんでいるのか、誰にも伺い知ることはできなかった。
 

今彼の身を包むのは、白銀の鎧ではなく近衛騎士団の揃いの制服だ。赤に金と白を配した華やかなそれも、今はどこか沈鬱な空気をはらんでいるかのようだった。

 デインの視線の先にいる騎士と王女の仲は、宮中に出入りするものなら皆知っている。

 幼なじみ同士の気安い気持ちが、恋心に発展していくのを皆微笑ましい気持ちで見守っていた。

 ルドヴィクの方は、王女を迎えるのに身分が足りないという点をのぞけば、非の打ち所がない青年だ。

 いざとなれば、デインは彼を養子に迎えてもいいと思っていた。同じように思っていた貴族は他に何人もいるはずだ。それほどに彼は王女の相手にふさわしいと周囲に認めさせていた。
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