銀棺の一角獣
「……僕は君の婚約者だから」


 キーランの微笑みに、アルティナは何も返すことができなかった。婚約者といっても、押しつけられた相手だ。国が侵攻されることなどなかったら、彼と婚約することなどなかった。


「わかっているよ。君が愛している相手は……あの騎士であることくらい」


 アルティナは視線をそらせた。彼の穏やかな微笑みが胸に痛い。


「それでも、君にたいしてはできるだけのことをしてあげたいから」

「……なぜ?」


 どうして彼がここまで気を配ってくれるのかわからなかった。


「それは、口にしない方がいいと思うよ」


 肩をすくめて、キーランは立ち上がる。


「僕は君に――君たちに、助けてほしいと思っている。父がなぜあの一角獣をもとめているのか知らないけれど――」

「……わたしたちに何ができるでしょうか?」

「わからない」


 軽い口調でキーランは言う。

「とりあえず、君も君の騎士たちも休養をとって健康を取り戻す必要がある。その間に僕は――まあ、いいや。今日はゆっくりお休み」


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