銀棺の一角獣
 それでも、王女――即位したばかりの女王は、他国の王子を夫として迎えるのだという。確かに今は他の選択肢はないのも事実ではある。

 アルティナは悲しげに微笑んだ。


「一角獣とやらが国を守ってくれるというのなら、父も兄もまだわたしの側にいてくれるはずでしょう? これ以上、血が流れるのは見たくないのです……。停戦の条件は全て受け入れることに決めたのです。これを撤回するようなことはあり得ません」

「――かしこまりました」


 臣下一同を代表して、デインはアルティナの宣言を認めた。

 アルティナは青ざめた顔に笑みを張り付けたまま、人であふれかえっている広間を後にする。

 後ろの隣から滑り出た青年が彼女の後を追ったのを、誰もとがめようとはしなかった。
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