銀棺の一角獣
「……父が君の出発を許すとは思わなかったよ」


 キーランは言った。


「そうですね。わたしも、無理だろうと思っていたので驚きました」

 そうアルティナも返す。

 二人はキーランの用意した馬車に乗っていた。アルティナには世話係が必要だと主張したケイシー、それに同行して神殿に戻るカレンも同じ馬車に乗っている。キーランの従僕は、護衛として馬車のすぐ横を騎乗で進んでいた。

 馬車は大きくて、中は全てふわふわとした柔らかな素材でできている。床に座ってもいたって快適で、今は座席を折り畳んで収納してしまい、クッションを並べたものにアルティナとキーランはよりかかっていた。

 カレンはアルティナの隣にいるが、少し落ち着かない様子だ。

 クッションを使うように勧められたのは固辞して、ケイシーは扉近くに背筋をまっすぐにして控えている。
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