誰かが始める断片劇
国の門まで来ると、人影がみえた。


「……師匠?」


どうしたのだろう。


「見送りはしないのでは……」


「忘れ物です」


「え? 忘れ物なんて……」


「いいから持っていきなさいハディス」


そう言って、乱暴に手渡したのは、数枚の原稿用紙。


「それ、ちゃんと読みなさい。
それから、


死ぬことは許しません」


それだけ言って、立ち去ろうとする師匠。


私は、師匠の背に向けて叫んだ。


「師匠ぉっ!
……今まで、ありがとうございましたっ!」




「我が弟子。過去形にするのはやめなさい」


振り向かずにそう言って、師匠は行ってしまった。
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