誰かが始める断片劇
私が生まれて、13年の月日が流れた。


私はその日、3歳の頃からの日課だった剣の稽古をしていた。


「そんなに一生懸命剣振り回して、楽しい?」


そんな私に、一人の少年が言った。


黒髪で黒目という珍しい容姿をした、私よりも少し歳下の少年だった。


私は、剣を振るうの一旦止めてから答える。


「楽しいとか、楽しくないは、関係ないよ。私は勇者だから、強くなるために努力しなければいけない」


自分でも、あまり子供らしくない言葉を吐いたと思う。


そんな私に、彼は半目になって


「うわっ……なんて子供らしくない解答、君はいったい何歳だよ?」


「13だよ」


「うわ、僕と一つしか違わない」


「というと、君は12?」


「そうそう、つまり子供です。食って、寝て、遊んで、宿題さぼって、翌日学校で怒られるのが仕事な子供なのです」


あまり子供っぽくない芝居のかかった口調で語った。


「……宿題はサボっちゃ駄目だよ」


咎めると、彼は半眼になって、


「君は真面目だなぁ」


呆れた口調でそう言った。


どちらかといえば、私が呆れる側だと思う。


「私は、これが普通だと思うけど」


「う~ん、まあ、その辺の価値観は個人の自由だからとやかく言わないけど………」


彼は妙に達観した表情でそう言うと、不意に時計塔の方を向いて、


「あ、そろそろ帰らないとマズイや。というわけで、またね」


またね、そう言って手を振りながら、彼は帰った。
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