約束の花~命と恋の物語~
【203号室】
亜弥の病室の前に着いた。
…いる。
…母さんが、いる。
ドアノブに手をかけた瞬間、
「ごめんなさい…嫌です」
…亜弥?
「どうしてよ!?将来に関わるのよ!!」
母さんが怒鳴る。
…行けない。
行っちゃ、いけない気がする。
「…あたし、海岸に行ってたんです。」
「え…?」
「白浜海岸。祥のお母さんも知ってますよね?」
「…えぇ」
「病気の可能性があるってわかって…家族からも腫れ物にさわるような扱いされて…毎日が辛かった」
亜弥…
「それで、白浜の海見たら…悩んでるのが馬鹿馬鹿しくなった。」
「…」
「そんな時、あたしと同じように海を見て辛そうな顔をした…祥を見かけた。」
そうだ。亜弥は俺より前からあそこに…白浜海岸に来てた。
「最初は気にしてなかった…。でも、話しかけられて、気になって、友達になってくれたし友達も紹介してくれた。」
……。
「祥は、あたしを支えたいって言ってくれた。あんなに優しい人の優しい言葉に甘えたくなった。」
「あたしは、祥がいないと生きる希望を失う。祥があたしを生きる希望と言ってくれたように、あたしにとっても、祥が生きる希望なんです!」
母さんが黙る。
「あたしはもしかしたら今日明日死ぬかもしれない。…だからそれまでは、祥といたい。祥と…いたいんです」
…亜弥…