約束の花~命と恋の物語~



「ねぇ祥、それなに?」


亜弥は俺の手元をじっと見る。


もう指差す事さえできない。


「あぁ…これ?…ビデオカメラ。」

「なんで?」


…亜弥と俺は今、辛いけど幸せだ。


だから…


「将来、結婚して、子供産まれて…そしたら見よう。今病気と戦ってる亜弥を、大人になって、子供と一緒に見よう。…今、幸せだから」


亜弥が笑う。


「思い出づくりかと思った」


…そんなわけないよ、亜弥。


「お前は俺の生きる希望だ。お前は死なない。絶対に」


俺は亜弥を抱き締める。


もう俺の背中に手を回す事もできない。


わかってるから、大丈夫。


大丈夫だから、抱き締める。



< 139 / 258 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop