幻月幻夢
「獣に食われる危険があるからだ。」


「・・・食われる?」


紫刹の言葉に体を凍りつかせる。


「幻影国の王の、血を飲むとすぐに傷が治り、肉を食えば不老不死になる。そのため、多くの獣から命を狙われる。その危機から守るために、ある年齢に達するまで幻影国の王になる者は他の世界に逃がすんだ。」


「でも今の話だと、今でも私を狙う獣がいるんでしょ?」


「ああ。」


「ああって・・・そんな!」


「だが食わせはしない。国王がいなくなると幻影国は、荒れる。民は苦しみ、川は枯れ、幻獣たちも暴れるものが出てくる。そうならないために我々は、お前を守り王にする。」


紫の瞳は真っ直ぐにこちらを見据える。


「私はそんな大した者ではないわ。人の命とかそんな・・・。」


「お前は王だ。それは、間違いのないことだ。」


『紫刹、今日はそれくらいにしなさい。ゆっくりと教えていけば良いことです。』


「ヒッポグリフ・・・。そうだな。今日はゆっくり休め。」


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