幻月幻夢
そして紀良は、真っ白でふわふわな兎になった。


「可愛い。」


可愛さに頬を緩ませると紀良は口を開いた。


『やっとお笑いになりましたね。』


「え?」


『ヒッポグリフ様から、桜花様が笑わないから少しでも心が楽になるようにと私の桜花様の世話役になるように言われました。』


「鳥勾から。」


『はい、そして紫刹様もあなたを心配なされていると思います。』


「あいつは、そうじゃないと思うわ。」


『いいえ、誰よりもあなたを心配しています。だってあのお方は…』


「紀良。」


冷たい声が聞こえ、体が凍りつく。


『紫・・・刹様。』


「紀良、余計なことをこいつに話すな。」


『ですが…』


「黙れ!」


『すいません。』


紀良が頭を下げるのを見てハッとする。
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