幻月幻夢
「お前に話がある。紀良。」


『はい。失礼いたします。』


紀良は頭を下げると部屋から出て行ってしまった。


「話って?」


「この国についてだ。」


「この国のことは知りたくないわ。私は家に帰りたいの!!」


「お前はいつも普通の生活がつまらなかった。別の世界、夢で何回もみていた幻影国への憧れがあった。違うか?」


「違う。確かに本当だったらどうなのだろうとは思った。けれど本当に行けるとは思ってもいなかった。」


「本当か?お前はわかっていたのではないのか?」


「・・・何を?」


心臓がドクンドクンと鳴る。


「お前は、異世界からの迎えが来ることを知っていたのではないのか?だからこそ夜に月を眺め訴えるように、つまらないと月を見て思った。」


「違う!!」


「嘘を言うな。」


紫の瞳は私の心を見透かすかのように見てくる。
< 23 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop