幻月幻夢
「何を言っているのかわかっているのか?」


「私の血は、怪我を治すんでしょ?早く飲みなさい。」


「・・・嫌だ。」


「え?」


「自分の体を大切にしろ。」


「あなたに言われたくないわ。」


「俺は良いんだ。血をそう簡単に他の者に与えてはならない。」


「でもあなたの傷を早く治さないと。」


私がそう言うと、紫刹はため息をつき怪我をしているほうの腕の袖を捲りあげた。


「あれ?」


深いと思っていた傷はそこまで深くなく血はほとんど止まっている。


「だから言っただろ。俺の体は傷の治りが早い。」


そう言うと袖を戻し、紫刹は遠くの方を指で指した。


「あそこに村があるのが見えるか?」


よく目を凝らすと確かに紫刹の指をさす方向に小さな村が見える。
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