幻月幻夢
「何これ…」


村に入って私は唖然した。


村の畑は枯れ、家はあるものの人の気配を感じない。


「これが王がいなくなった国の姿だ。」


「王がいなくなるだけでこうなってしまうの?」


「王がいなくなると国を守る強い力が無くなる、そして獣たちは村を襲い人を食う。そして、人が獣たちを恐れ家から殆ど出ないと、手入れをされない畑は枯れる。人は次第に食い物の奪い合いになり、水を確保するために川の水をせき止めようとする。この悪循環だ。」


「そんな…」


ひどすぎる光景に言葉が出ない。


王の力はそんなに強いのだろうか?


「私にはそんな獣から人を守る力なんてないわ。」


「お前の力は、奥底に眠っているだけだ。その力が目覚めたときお前はこの国を豊かにするだろう。だがお前がもし王にならず逃げだすならこの国はこのままだ。」


「そんな!」


「だ・・・れ?」


声が聞こえ後ろをみると、がりがりの姿の子供がこちらを見ていた。


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