君が好きな理由。
私が繁華街を歩いていると、たいていいろんな男が声をかけてくる。
たとえば、援交目的のおっさんとか、キャバクラの勧誘とか。
でも今日は珍しくそんなやつらが寄ってこないから、ラッキーと思いつつ、道を歩いていた。
今帰っても、早すぎるかな…
まだ、帰りたくないな。
いつもは男を振り払う間に時間がつぶせるけど、今日はどうしようか、なんて思ってたら、今日のラッキーの原因を見つけた。
街の中、一際人が集まって、怒号や喧騒が飛び交っている場所。
目がチカチカするような原色の男達と、純白の特攻服に漆黒で『黒鳥』の字を背負う男達が向かい合っていた。
そう言えば、チームの抗争が激しくなってるって、マスターも言ってたっけ…?
珍しく気になって、人ごみに混じって2つのチームを見ると、
ニヤニヤといやな笑みを浮かべる原色の1人と目が合ってしまった。
あ、やば…。
私が立ち去ろうと後ろを向くと、原色の怒号を合図に、ちょうど殴り合いが始まった。
これに便乗してさっさと立ち去ろうと足を速めた私は、少し『黒鳥』のことが気になって、一瞬振り返った。
―それが間違いだったと気づくのは1秒後。