君が好きな理由。


と、その時、
「お前ら、人質とるぐらいしか出来ないなんて、ほんとにクズだな。笑」
白の特攻服を着た、幹部っぽい青年がくすくすと笑いながら言った。
「あぁ!?」
「だーかーらぁ、テメーらはどうしようもないクズだって言ってんの!」
明るい茶髪の青年は、あえて挑発するように言う。
彼の後ろの青年達も、男を見て笑い出す。
「ふ、ふざけんな!!てめーら、俺達を見くびんな!今ここでこの女殺してやる!」

あぁもう本当、くだらない。

「別にいいけど」
ナイフを振り上げた男に、私は冷たく、静かに言い放った。
「は?」
明らかに男が固まる。
突然口を開いた私に驚いたんだろう。
「だから、殺せば?」
「な、何言って…」
「あなた、私を殺したいんでしょ?だったら今すぐ殺してよ。」
「…」
その場の全員が息をのむのが分かった。
「なに?びびった?案外小心者ね。いざってなるとダメなタイプ?いきがってても所詮小物なのには変わりないのね。」
微笑を浮かべると、感嘆の声がどこからか漏れた。
ナイフを持った男は顔を真っ赤にして、
「て、てめぇ!!」
ナイフを振り上げた。



微笑を浮かべたままの私は、
あの冬の日を思い出して、
あぁ、やっと死ねると
目を閉じた。

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