君が好きな理由。
ハヤトは襲い掛かってくる男たちを次々と倒していった。
確かに、少し怒っているような気もする。
黒い特攻服を翻し、原色を圧倒する姿は、まさしく『黒の王』。
鮮血と共に踊る彼の姿を、私は見つめるしか出来なかった。
「すごい…」
私は思わず感嘆の声を上げた。
「ハヤトが『黒の王』って呼ばれるの、分かった?」
「うん…。」
タクミの言葉に空返事を返しながら、私は彼から目を離すことが出来ないでいた。
ああ、彼は強い。
私もあんなに強かったなら、今でもこんなに苦しむことはなかったのかな…?
目を閉じると想い出すのは、笑うあの人の顔。
最強の男を見つめながら、私は複雑な想いを抱いていた。
「おつかれ~」
原色たちを全滅させた彼がこっちに歩いてきた。
「お前、ほんとに何もしなかったな。」
「や、やっぱ見せ場はハヤトに譲んないと!笑」
「バカ言え。…お前1人でもカタつけられただろ。」
少し、ハヤトの声のトーンが下がる。
思わずぞくっとした。
「ハヤト、ちょっと冷静になれよ。イラつくのは分かるけど、俺がやっちゃうと手加減できねーからさ。」
へらっとタクミが言う。でも、次の瞬間、がらりと雰囲気が変わり、さっきまでと打って変わって低い声で
「…お前が1番知ってるだろ?」
この2人、一体…?
「ていうか、巻き込んで悪かったな、マリア!」
くるっと、私のほうを振り返ったタクミはまさかの笑顔で、私はちょっとこけそうになった。
「ほらー、ハヤトも謝れっ!」
「別にいいんだけど。」
「え?」
タクミは首を傾げた。
「もともとは私が捕まっちゃったのが原因だし。その怪我も…」
ちらり、とハヤトの手を見る。
「ごめん。」
思わず目をそらすと、
「こっちこそ悪かったな。」
「え…」
「人質をとられたのは完全に俺らのミスだ。危険な目にあわせて、悪かった。」
まっすぐに見つめる漆黒の瞳に、ほんの少し、鼓動が早まった気がした。