君が好きな理由。
「アイツ、また別れたんだってー」
「嘘。早くね?」
「いつもの事じゃん。」
「とっかえひっかえ男と付き合ってはすぐ捨てる。超ウザいんですけどー」
「自分は可愛いってアピールしたいわけ?」


夕暮れの教室には、似合わない甲高い声。
私がいないのをいいことに、彼女たちはさらに続ける。


「そうなんじゃない?利用される男もかわいそうよねー」
「でも、そんなことでしかアピール出来ない、あいつのほうがよっぽど哀れじゃね?」
「まぢウケるんですけどww」

本人が教室に入ろうとしてるのにも気づかず、悪口なんて言ってるあなたたちの方が哀れだと思うけど。

「本当に、気に食わない、あの女。」
「今の間に、机にゴミぶち込んどけば?」
「きゃははっ!!」
「それいーね!」

濃いメイクをしたクラスメートたちは、笑いながら黒マジックとゴミ箱を手に取る。
その時。


「や…やばいんじゃない?」
グループの中で比較的おとなしそうな少女がポツリとつぶやいた。
「は?」
空気が、凍る。
「だ…だって、今までマリアに嫌がらせした子達がどうなってきたか…知ってるでしょ?」

「なに?あんた、アイツの味方なわけ?」
「そ、そういうわけじゃ…」
「じゃ、どういうこと?」
グループのリーダー格の少女が、その場にいた数人の少女たちが、一斉に彼女を冷たい瞳で見る。彼女の体は、小刻みに震えだした。
「ねえ、沙里。わかってるよね。ここにいる全員が、アイツのこと嫌ってるって事。」
「わかっててアイツの味方するんだ?」
「ち、違…」

「「あんた最低だね。」」

少女たちの声が重なった。


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