「囚われ姫~星屑は魅惑の花の香に抱かれて~」
あわあわと慌てる隼人が珍しくてあたしは思わず笑う。
こんな純粋さ、あたしは一体いつ捨てたのだろう?




「前に聞いたことがあるの。“もし隼人殿に告白されたら付き合うの?”って。そうしたら夏乃、胸を張って言ったわ、『その時に姉サンの想いが叶っていたら』」
「そんなはずは…」
「ないって?部下は主の幸せを願う、当たり前になっている図式だけど、やっぱり好きだわ。でもねあたしの幸せなんて“叶わないから願わないで”。隼人殿も夏乃も」




階段の上に見えた夏乃の方を振り返る。
夏乃がわなわなと身体を震わせるのが分かる。




ヤバイ、マズった。
そう自覚した時にはすでに手遅れだった。
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