パーフェクトティーチャー
「デートなわけ、ないじゃないですか!」


ふたたび滑舌が乱れる。


「違うの?」


「ええ、もちろん違いますよ。
信じてくださいよ。
デートじゃありませんから。
私今、彼氏いないし。
ていうか、彼氏がいたことなんて今まで一度もないんです。
しばらくその状態が続くだろうな」


「わかったわかった。
まあ、そうムキになるなって」


「いやだなー。
ムキにもなりますよー」


「ごめんごめん。
悪いのはこっちだ。
教師が生徒のプライバシーに踏み入っちゃいけないよね。
今の質問は忘れておくれ」


「いえいえ。
そういうことじゃなくてですね。
私がいいたいのはですねー、そのー、本当に彼氏なんていないし、いたためしもないし・・・これから先も作る気がないということでしてねー」


「もう十二分にわかったよ。
じゃあくれぐれも気を付けて帰るんだよ」


氷室はほたるの肩をポンとたたくと、華麗にきびすを返す。


やがて木漏れ日のそそぐ長い廊下に消えた。




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