パーフェクトティーチャー
「私、思ったんです。
水も飲まない、トイレも流さない、風呂にも入らない。
それで平気でいられるってことは、もはや人間ではありませんよね」


「だから彼はロボットだっていいたいの?」


「はい。
その可能性は十分考えられます。
そう考えると、近頃のロボットは高性能でしょ?」


「アンタの調査が本当なら確かにそうね」


「そこで、そのカタログでございます!」


里中は引き出しから取り出したメガネをかけ、さっきよりも注意深くカタログを見つめた。


「まあ。
このロボット、人間そっくりだわ。
いいえ。
人間以上に人間らしいわ。
しかも人を引き付ける特別な力をもってる。
目が生き生きしてるもの」


「理事長、背に腹は代えられません。
この際、うちも採用しましょう」


「この教師型ロボットを?」


「はい。これしか打つ手がありません」


「いったい、いくらくらいするものなの?」


「業者に訊いたところ、メンテナンス料も含めまして、一年間のリース代はおよそ三千万円だそうです」


「あら、思ったより高額ね。
費用対効果を考えたら、割高じゃないかしらね?」


「いえいえ。
順調に生徒が集まれば、元を取れるどころか経営を立て直すことだって可能だと私は思いますよ」


「そうかしら・・・」


「はい。
生徒や保護者が求めてるのはパーフェクトな教師です。
うちの伝統と人気を取り戻す切り札は彼しかいないと思いますが・・・」


「そうかもしれないわね・・・」


理事長はしばらく虚空をにらんだあと、いつ以来だろう。


久しぶりに微笑んだ。

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