パーフェクトティーチャー
「あのー、おたくはまさか・・・」


「はい。
そのまさかでして。
私はー」


男は自分の名を名乗るかわりに、出版社名と週刊誌名を遠慮やためらいのない口調で告げた。


真奈美は顔面蒼白になった。


それは無理もない。


真奈美のような正統派の女優にとってスキャンダルは命取りになるものである。


「こ、こ、困るのよ。
こんな写真を撮られて世間に誤解されたら・・・」


真奈美はなかば本能でカメラに手を伸ばし、それを力づくで奪おうとした。


「ちょっと待ってくださいよー。
乱暴はやめていただけますでしょうか・・・」


カメラマンと押し問答になる。


カメラマンもこんなおいしいネタを失いたくはない。


三時間以上も前から店の前で貼りついていたのだ。


「ちょっと氷室先生!
ボーっと突っ立っていないで、先生も力を貸してくださいよ」


真奈美がそう懇願するが、氷室はこれ以上ないというほどの知らん顔だった。



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