パーフェクトティーチャー
氷室は、


「じゃあボクはこれで失礼します。
どうもごちそうさまでした」といってきびすを返した。


長い脚を器用に使い、大股で歩く。


振り返る気配は一切ない。


ほたるはその様子を見て、いい気味だと思った。


氷室を誘惑しようとして墓穴を掘るなんて、自業自得だ。


オバサンよ・・・


氷室先生を自分のものにしようだなんて十年、いや、二十年遅いんだよ。


心の中でシャウトする。


店に戻り、更衣室で着替えてさっさと自分も帰ろう。


そう思った矢先だ。


真奈美の一言で動きがぴたりと止まってしまった。


「もしも、この写真が表に出たら氷室先生も学校にいられなくなるわよ」


「そ、そ、そっか!」


氷室が不倫教師の濡れ衣を着せられてしまう。


真奈美のいうとおり、そうなったら教育委員会も見過ごさないだろう。


確実に氷室はクビだ。


氷室のいない学園生活なんてほたるには考えられない。


それだけは何が何でも阻止しなければ。




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