言った者勝ち、でしょ。
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彼がぐんぐん歩くから、引っ張られてついて行くしかない。
意味は、もちろんわからない。
「時間あるよ」なんて一言も言ってないのに、とも思う。
…なのに、振り払えない。
彼のことが、好きだから。
繋がれた手の平から伝わる体温も。
少し硬いその感触も。
目の前の背中も。
私の胸を打つ。
「ねえ!」
「……なに」
振り返らない彼の背中に、思わず「好き」と言葉を投げた。
ピタリと彼の動きが止まり、その口からは大袈裟なため息。
「…なんで先に言うんだよ」
fin.