百鬼夜行の主
『主様!!』
一匹の雑鬼が部屋に飛び込んできた。
『大変です…!紋司詩町全体に、狐火が!!』
『なんですって!?』
私は主様に近づいた。主様の肩を掴む。
『主様!緊急事態ですよ!しっかりなさってください!!』
「…あぁ」
主様の声に抑揚がない。まるで、魂の抜けた人形のようだった。
私は意を決し、主様の頬を思いっきり叩いた。
バシッ―部屋の中に音が響き渡る。
『…いい加減にしてください』
主様の胸倉をつかんだ。
『あなた様は百鬼夜行の主なんですよ!仲間が傷ついただけでどうしてそのような状態になれるのですか!?あなたは鬼灯だけを背負っているのですか!?』
一呼吸おいて、主様が口を開いた。
「…雪羅、すまない」
『謝るのでしたら』
私は主様に羽織と刀を渡した。
『この戦いが終わってからにしてください』
「…あぁ。そうだな」
主様が顔をあげた。主様の瞳には、いつものように光が宿っていた。