百鬼夜行の主
「…怖いんだ。この力が。この力がなくても、不自由なことなんてなかった。普通なら無くてもいいのに、なぜこの力があるのかが分からない、普通の人間にはないはずの力を持っているのが怖い。自分が周りと同じ人間なのか分からなくなるんだ…」
気がつくと自分の抱えていた思いを全て話していた。怖い…恐怖からか涙が頬を伝った。
自分の力を恐怖だと感じる。馬鹿みたいだけど、事実だ。
周りと違う。そんなのは人間だから当たり前なのかもしれない。
しかし、私の場合はー「人間」だからという大前提にちゃんと当てはまっているか分からないのだ。
『…主様』
名前を呼ばれ、顔を上げた。
瞬間、何か温かいものに包まれていた。規則正しい心音が耳に届く。
しばらくして、その音が鬼灯の心音で、自分が鬼灯の腕の中にいるということに気づいた。
鬼灯が私を抱き締めながら、言う。
『俺なりの解釈ですが…主様の力は百鬼を率いる力だと思います。その力があったからこそ俺らは主様の百鬼夜行にいることができたのです…ですから、その力は恐怖などにはなりません。その力は、我々を率いる主たるものの力です…』