KISS

・・・ポタリ


ポタ、ポタッ・・・


白いノートに染みを作る。


だめだ。


止まらない−・・・


「先生」


「なに?」


「月島さんが具合悪そうなので、保健室連れていきます」


そう言って、あたしの腕を引っ張って立たせたのは。


「・・・っ」


あの、熱い手の持ち主ではなかった。


「大丈夫ですか?」


海くんが漆黒の瞳を伏し目がちにそっと尋ねる。


巧のいる方をちらりと見ると、巧がまっすぐあたしを見つめていた。


止めるでもなく、怒るでもなく。


ただ、あたしと海くんを見つめるだけ。


・・・否定も言い訳もしないんだね?


あたしのこと、陸ちゃんと重ねてたの?


ホントはあたしのこと、妹みたいにしか思ってないんでしょう?


どこからがホントで、どこからが嘘?


それとも全部嘘だった・・・?
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