KISS

それは思ってもいない一言。


「中2の時に、膝を怪我しました。手術までしたんですけどね・・・」


『もう、元通りにはなりません』


「日常生活には支障はないんですが、陸にとってテニスは世界の全てでした」


それを失ってからは、アイツは瞳の色を無くした。


そんなとき、巧に再会して励まされて。


『俺、お前がテニスしてるとこ好きだよ』


『ホント?』


『だから、頑張れ』


『・・・じゃあね、ひとつ』


−お願いがある−


「好きってニュアンスの捕らえ方が違うってことくらい、陸も分かってました」


だけど、どうしても巧の<何か>が欲しかった。


だから・・・


「そのあとの話はよく知りませんけど、」


さっきの話からして、そういうことだったんですね−・・・


・・・世界の色というもの全てが、白か黒かにしか見えなかった。
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