KISS
通話ボタンを押した瞬間、声が聞こえた。
『留年するぞ』
・・・しょっぱなから痛いこと言いやがって。
切ってやろうかと思ったが、何とか抑えた。
『聞いてる?』
「・・・ん」
少し返事をする。
『・・・ごめん』
龍があたしに謝ってくるなんて、初めてに近い出来事だった。
「龍悪くないじゃん」
どうして謝るの?
『お前に言えなかったから』
「しょうがないよ」
遠くを見つめると、目的地が見えてきた。
『・・・でも、えみ』
「んー?」
そっとローファーを脱ぐ。
『お前が思うような事態にはなってないから。多分ちょっと勘違いしてるはず』
「はあ?」
どういうこと?
問いかける前に、電話口の人物が変わった。
『えみ!?』