KISS
・・・やっぱり代わりやがったか。
そう思いつつ電話を切れないのは、本当はその人の声をすごくすごく聞きたかったから。
「巧」
『お前、今どこ』
「電車1本で来れるとこ」
『・・・ふざけてんなよ』
巧の声が震えていた。
「へんなことしないから大丈夫だよ」
『ばいばいって・・・んだよ・・・っ・・・』
起きてたのか、やっぱり。
「そのまま」
だって、と言葉を繋げたとき、あたしは靴下を脱いだ。
「巧」
そっと地面に足をつけると、砂の熱さが伝わってきた。
目を閉じる。
ごめんなさい、巧。
「手を離すから」