KISS

『あたしの初めて、唇と体で捧げたから。巧はあたしのもの、あたしは巧のものだよ』


・・・じゃあ、あれはどういう意味?


「ざけんな」


陽ちゃんがあたしと巧の間にわって入る。


「お前、えみのこと、そうやって傷つけてきたのかよ・・・っ」


「陽ちゃ・・・」


「最低」


そう言い放つと、陽ちゃんはあたしをぐいぐい引っ張り出した。


「陽ちゃんっ」


「えみは馬鹿だ」


陽ちゃんの顔を覗き込むと、陽ちゃんは泣いていた。


「何があったかよく知らんけど、お前が俺呼ぶときはやばいときばっかりだよ」


「・・・陽ちゃん」


陽ちゃんはあたしの従姉妹だ。


普段はイギリスに住んでて、あたしはつらいときにいつも陽ちゃんに電話した。


・・・だからなのかな。


陽ちゃんはあたしの痛みにすぐ気づく。
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