KISS

陽ちゃんの車に乗り込む。


裸足でいたせいか、少し寒い。


「これでも着てな」


陽ちゃんがあたしにひざかけを渡してくれた。


「・・・っ」


陽ちゃんの優しさが痛くて、あたしは涙が零れた。


泣きながら話すあたしの頭を撫で、全てを聞き終えると陽ちゃんはひとつ、ため息を落とした。


「・・・えみもちゃんと言えよ」


陽ちゃんは車を発進させる。


「たく坊にどう思われてもいいから、ちゃんと自分の気持ち言え」


大人のフリして黙ったままとか、お前らにはまだ早いよ。


「・・・嫌われたくない」


あたしの一言に、陽ちゃんはミラー越しに微笑んだ。


「たく坊もそう思ってたから、えみに言えなかったんじゃねえの」
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