KISS

「海くんの嘘つき」


校庭に呼び出して、あたしは海くんに苦笑い。


「あのふたり、何でもなかったじゃない」


海くんがそっぽを向く。


「何でもないわけじゃないですよ。キスはしてるんだし」


「人工呼吸でしょ」


「陸は本当に巧が好きでしたし」


「昔はね」


あたしは全てを知った。




『栗原陸さんは手術をうちの病院で受けたの』


そう。


巧のお父さんはお医者さんで、総合病院の院長先生。

陸ちゃんは足の手術をそこで受けた。


『あの子、喘息持ちらしくてね』


手術の前に、陸ちゃんは病院を抜け出した。


全速力で逃げていると、喘息の発作が出て一・・・


そこを巧がたまたま通りかかった。
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