KISS
『そこで飲み物を飲ませたらしいのよ』

あの日、巧はびっくりするくらい罪悪感を感じてたわね。


そう言って旭さんは笑っていた。


「口移しで飲ませたんでしょ、要するに人工呼吸だわ」


あたしの一言に海くんは手を挙げた。


「・・・お手上げです」


「陸ちゃん、今日入院なんでしょ」


海くんが俯いて頼りなく笑った。


「・・・治るかは分からないけど、手術するそうで」


その頼りない顔は、陸ちゃんを思う兄の顔だった。


昔から、破天荒な陸ちゃんを見守る海くん。


「陸は巧が好きだった」


俯いたまま、海くんが話し出した。
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