KISS

携帯が鳴る。


あたしのじゃなくて、海くんの。


「はい。・・・陸?」


心臓がどくんとはねる。


陸ちゃん・・・どうかした?


「えみに代わって、って」


海くんがあたしに携帯を渡しながら、言った。






「巧が、来ていないらしいです」






カシャンッ!


海くんがあたしに手渡した携帯が、音を立てて地面に落ちた。


『もしもし!?えみっ!』


電話口から聞こえる、陸ちゃんの声。


『巧がまだ来てないの!もう1時間も過ぎてて・・・携帯も通じない!』


もしもし、えみ?


もしもし!?




陸ちゃんの声だけがエコーされる。




・・・あたし、心配しすぎだ。


巧と連絡がつかないからって。


頭ではわかってるのに、体は教室に向かって走っていた。
< 129 / 170 >

この作品をシェア

pagetop