KISS

そのときだった。


「笑?」


・・・今、タイミング的に最も現れたらマズい奴の声。


「・・・龍、どうしたのコイツ」


「んー」


龍が言葉を濁す。


あたしは慌てて涙をふき、巧に笑顔を見せた。


「巧、まだ帰ってなかったんだ!」


「笑、どうかした?」


え・・・


「泣いてたじゃん」


そっと頬に触れるアタタカイ、というよりアツイ手。


龍が立ち上がってあたしを見た。


「ちゃんと言わないとわかんねえよ」


そう言って、静かに教室を出て行った。


残されたのは、あたしと巧だけ。


「か、えろーかな・・・」


逃げ腰のあたしの腕を掴んだのは、巧だった。
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